第百十章

「弾は肺をかすめていった。あと二センチずれてたら、神様でも救えなかったぞ」

圭治は血の滲んだガーゼをゴミ箱へ放り投げた。

「自業自得よ」

葵はカセットテープをポケットに突っ込んだ。

「素直じゃないね」

圭治は鼻で笑い、春の方へ振り向く。

「こいつを見張ってろ。点滴が終わったらナースを呼ぶんだ」

圭治が立ち去ると、葵は手すりに掴まりながら身を起こした。

「葵、本当に隣へ行くの?」

春は慌てて手を伸ばし、彼女を支えようとする。

「死んでないか、確かめに行くだけ」

葵は処置室のドアを押し開けた。

隣の集中治療室の前では、悠が壁に寄りかかっていた。その顔色はひどく沈んでいる。...

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